神話概要 5 (魔術師達のその後){オリジナル小説 SINFONIA(シンフォニア)の神話概要 その 5 です。}

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神話概要 その 5
魔術師達のその後

  オリジナル小説 シンフォニアの神話です。
  ここでは、物語の裏で暗躍する、魔術師達の動きを掲載しています。
アグリッパの魔力

  アグリッパは、師パラケルススに匹敵する魔力を持つ存在であった。
 彼は、師の指示で魔力を結晶化させる術を研究し、それを完成させた後、師の命で、兄弟弟子達の魔力を結晶化した。

  トラッディーを除く五人の弟子の魔力は、その一部を結晶化された。
  ザルバーンの魔力はスタールビーに、ホノリウスの魔力はスターエメラルドに、アルベルツスの魔力はスターサファイアに、イウェインの魔力はスターダイヤモンドに、アグリッパ自らの魔力はブラックオニキスに結晶化され、これらはクリスタルジュエルと呼ばれた。

  パラケルススはこれらを集め、自らの魔力を最大限に高めることを考えていたが、それを成すことなく死んだため、クリスタルジュエルはアグリッパの手元に残された。
 アグリッパは、それらを完成させた後、計算もあって、遅れて呪いに参加した。

アグリッパとトラッディー

  アグリッパは生き残った。遅れて参加したこと、そして、彼の魔力が他の者より、はるかに優れていたことが要因であった。
 しかし、魔力の大半を失った彼は、それを取り戻すために、師であるパラケルススがかくまった古代王朝の王子、シュールの魔力を奪うことを思いついた。

  シュールは、唯一、呪いに参加しなかったトラッディーにかくまわれていることを知っていた彼は、トラッディーを誘い出し、その隙にシュールを部下に奪わせた。

  トラッディーと対面したアグリッパは、師の最後の望みに協力しなかった彼を責め、師の遺産を引き継ぐ資格が無いこと非難した。トラッディーは、それを承服し、隠棲することを告げた。

  アグリッパと別れたトラッディーは、アグリッパによりシュールが奪われたことに愕然とした。師に彼を預けられて以来、息子のように接していたトラッディーは、アグリッパからシュールを取り戻すことを決意させたが、時すでに遅く、その行方はつかめなかった。
 トラッディーは悲嘆にくれ、隠棲した。

伊意の死

  パルテブランが崩御してまもなく、伊意も病死した。プライム・マテリアル界の人間であった彼は、パトリアエ・マテリアル人と比べて短い寿命のため、その命数を使い果たしての死であった。

  伊意は神々から授かられた力を、彼がこの世界に来て初めての友人だったマカラに伝え、仙人の地位を引き継ぐよう頼み、息を引き取った。

  マカラは友人の頼みを聞き、仙人となり、神々もこれを承認したが、政治的に何の功績も無い彼のシンフォニア帝国の中での立場は弱く、彼は隠棲することを考え、万知を求めるべく、娘を連れてガンガジュルシュルに挑んだ。

ハディートとマカラ

  ハディートの下を訪れたマカラは、彼と共に暮らしていくうちに、その調和の精神を最もよく理解した。
 また、神々から授けられし仙力法の力は、彼の弟子と比較しても遜色ないどころか、わずかばかり凌駕するようであった。
 ハディートは、自らの後を継ぐべきものとして、マカラを考えていた。

  マカラと同行した彼の娘は、ハディートに師事した。彼女は、すでに愛の女神フローディアの司祭の地位にあり、ハディートの弟子となるべき能力は備わっていた。

ハディートの死

  ついに、調和の使者たるハディートの死期が訪れた。  彼は調和の力を込めたいくつかの宝を作っていた。それらは一つを残して皆、光と闇の一対になっていた。

  彼の下には、この時、パラケルスス以外の五人の弟子と、友人マカラがいた。
 ハディートは、彼ら弟子が、長く世界の調和に携わることが出来るよう、時の石を作り出し、弟子と共に分け与えた。これにより、弟子達と友人マカラの寿命は、彼に匹敵する長さを持つことになる。

  問題は、調和の力を受け継ぐべき人選であった。
 彼にとっては一番信頼できるマカラにこそ、この力を受け継いでもらいたかったが、マカラはそれを固辞した。
 また、事あるごとに秘法の力を知ろうとするリガルディーと、自らの美を保つために秘法の力を利用しようとするダイアン・フォーチュンをハディートは信頼していなかった。

  彼が彼の死後、調和の使者となるべき者に望んでいたことは、自らと同じく世界の均衡を第一に考える者であった。

  特に、世界の均衡を計るための宝は慎重に管理されるべきであった。
 結局ハディートは、いくつかの宝を弟子に分け与える一方で、重要な物は自らの作り出した生物や迷宮にて守らせ、保存することにした。

  彼は、高弟とも言える最初の弟子、サミュエル・リデル・マクレガー・メイザースと、二番目の弟子、ラ・ホール・クイトにソリアの杖を与えた。

  そして、重要な宝であったソリアの金貨の一枚を、マカラの娘サンタムールの胎内に埋め込んだ。しかし、サンタムールが誰かに倒され、それが奪われることを恐れたハディートは、彼女には時の石を与えず、代わりに転生の石を埋め込んだ。

  これにより、彼女の命が尽きることがあっても、彼女の魂とソリアの金貨は、次の資格を有する肉体に転生されることになる。
 このことは、ハディートとマカラだけが知っていた。

  そして、それ以外の宝は全て、彼の作り上げた迷宮などに保管された。
 ソリアの金貨闇はクレルモンフェランを守る神鳥ガルーダの巣に隠し、もう一つ重要な宝であるソリアの天秤は、ズールという生物に守らせた。

  ソリアの書はクレルモンフェランに作られた迷宮に隠され、後に、サンタムールの所有となった。

ハディートの使徒達

  ハディートが死んだ。  その後、ソリアの宝を受け継いだ者も、受け継げなかった者も、隠されたそれをめぐって対立したが、サミュエル・リデル・マクレガー・メイザースとラ・ホール・クイトは与えられた物で満足し、クレルモンフェランを離れた。

  メイザースは自らの魔力で移動式の空中都市を創り上げ、それで各地を移動しながら、万知を求めた。
 ラ・ホール・クイトは、密かに心惹かれていたサンタムールに、共に暮らさないかと求めたが断られ、失意の内にガスラントに移り、自らの塔を建設し、そこに封じられていると言われたサイファの研究に入った。

  リガルディーもまた、自らが求めるものを優先し、不死の生物となり魔界に消えた。
 フォーチュンはなんとしても宝を奪おうとしたが、失敗し、壊滅状態にあったベイバロン教団を立て直すため、ベイバロンの教皇となった。
 しかし、いつの日にか、それらを手に入れることを密かに誓っていた。

  クレルモンフェランにはマカラとサンタムール親子が残った。
 次世代の調和の使者が育つまで、マカラは調和の使者の代行者としてこのちから世界を監視した。

アグリッパとサイファ

  シュールの魔力を吸い取り、完全に復活したアグリッパは、魔界に潜み、不死の生物の王リッチー・ヴェグナとなったリガルディーを客として迎えていた。  リガルディーは、彼が魔界にてその創造に成功した、魔界の生物と人間との間の子を、魔界に棲家を移した自分の代わりに、人間界で育ててくれるよう依頼し、代償として、彼が魔界で知り得たサイファについての情報を彼に教えた。

  サイファの情報を手に入れたアグリッパは、古に封印されたサイファの力を使うことで、本来自分が手にするはずであったパラケルススの遺産をシンフォニア帝国から奪い返すことを考えた。

  彼はリガルディーから得たサイファの情報を元に、ガスラントに赴き、氷の精霊王をクリスタルジュエル・スターサファイアより引き出した、氷雪のアルベルツスの力で友好関係を保ち、精霊王の住む氷の砂漠を通過した。
 そして、サイファが封印された洞窟を守る、大地の精霊王に対しては、緑林のホノリウスの魔力を秘めたクリスタルジュエル・スターエメラルドの力で協力させ、サイファの肉体が封印された角を発見した。

  そして、彼がパラケルススからクリスタルジュエルを作るためにと預けられた、四つの精霊力を蓄えたアーティファクトを用い、サイファの精霊力を高め、その肉体を復活させ、サイファは自らを封印していた角を、その肉体の一部とした。

アグリッパとトラッディーの戦い

  サイファを復活させたアグリッパはサイファの協力を取り付けることに成功し、師の遺産を奪うためシンフォニア帝国に戦いを挑んだ。
 彼は戦いを挑むに当り、自分が敗れた時のことを考え、自らの復活の儀式の準備も済ませておいた。

  仙人伊意亡き後、それを継いだマカラにも去られたシンフォニアの魔術師達は、いきなり現れたアグリッパの魔力の前に次々と打ち倒されていった。
 アグリッパは魔力の使用が封じられる戦場にならぬよう計算して、数人の護衛を伴い、パラケルススが残した魔法陣にテレポートし、パラケルススの使っていた魔術師の塔の宝物庫を襲撃した。

  しかし、そこにはパラケルススの残した宝は無く、アグリッパは王宮に向かった。
 生き残った魔術師達は、王宮に使者をたて、危急のときを知らせた。

  パルテブランの後を継いだイキサレス一世は、剣聖となったものの、父とは違い、名目のみの剣聖で、とても陣頭で戦えるような人物ではなかった。
 パルテブランの死後、実質的にシンフォニア帝国を統治した、パルテブランの三人の友人も、バールカ、ゴートルはそれぞれの任地にあり、かつては戦場を駆け巡ったハーンズも、アグリッパと一対一で戦う自信は無かった。

  王宮にアグリッパが迫り、アグリッパがその魔力で王宮を黒い霧で被い始めた時、異変は起きた。
 王宮の一方が、黒ではなく白い霧に覆われ始めたのだ。

  一度は隠棲したトラッディーが、アグリッパの野望を見抜き、必ずや師の遺産を狙って王宮に彼が迫ることを予想し、彼との対決の機会を伺っていたのだ。

  黒と白の霧の戦いが始まった。その力はほぼ互角であったが、油断していたアグリッパが先に、トラッディーの用意した封印の壺に捕らえられ、肉体と魂は分割されたかに見えた。
 しかし、復活の儀式を用意していたアグリッパは、先にその儀式を発動させ、永い眠りに入った。

  術を完成させたと安心していたトラッディーは、遠くガスラントから解き放たれたサイファの力で、逆に、サイファの角に封印されたが、同時に、サイファも自らの存在を神々に知られることを恐れ、眠りについた。

  こうして、偉大な魔術師達は、それぞれの思いを胸に、長い時を待ち続けることになったと言われている。
 彼らが再び歴史の表舞台に現れるのは、はるかに後世、鉄と血の交わりによりベイバロン詩が奏でられる時となる。

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