神話概要 4 (シンフォニアの成立){オリジナル小説 SINFONIA(シンフォニア)の神話概要 その 4 です。}

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神話概要 その 4
シンフォニアの成立

  オリジナル小説 シンフォニアの神話です。
  ここでは空前絶後の英雄と言われるパルテブランの興したシンフォニア帝国の成立から、英雄の死までを掲載しています。
伊意の旅

  パトリアエ・マテリアル世界にやって来た伊意は、小さな島々の小集落を移動しながら、農業の知識を伝え、その代償として住民に小船を借りて東に旅をしていった。
 そして、数年を経て、彼はエルメキア王朝にたどり着いた。

エルメキア王朝と伊意

  エルメキア王朝に着いた伊意は、農業分野でのし上がろうとしたが、海洋民族であったエルメキア人には、彼の理論は受け入れられず、また、広大な耕地を持たない彼らには無用のものに思えた。
 彼は冷遇されるだけにとどまらず、変人として迫害され、傷心のままエルメキアの地を旅立った。

伊意とマカラ

  エルメキアを旅立った伊意は、バルハー大陸に着くと、初め北東を目指した。
 しかし、この大陸で最も栄えているのが、南であると知ると、すぐさま方向を南に変えた。

  旅の途中、彼はマカラという自分より少し若く、同じく精霊の力を操ることの出来る青年と出会い、意気投合し、旅を同じくした。
 マカラには、幼い娘がおり、マカラは娘をつれて、伊意と共に南に向かった。

パルテブランとの出会い

  南に旅立った伊意は、古代王朝を滅ぼし、内政に専念していたパルテブランに謁見した。 そして、彼の説く農政理論に感心したパルテブランは、すぐさま伊意を登用し、同行したマカラも伊意の補佐役として登用した。

  伊意は数年のうちに、パルテブランと挙兵を共にした三人の友人とも友好関係を築き、宰相にまで上りつめた。

  伊意は、国政が安定すると、彼がここまで来た道のりについてパルテブランに説明し、彼の野心を西方に向けさせた。
 彼を冷遇したエルメキア王朝をパルテブランにより滅ぼさせ、最終的にはプライム・マテリアル界に彼を誘い、父を殺したクレオ朝に復讐するためであった。

エルメキア王朝の滅亡
−第七世界の住人とアラウ王−

  パルテブランは、内政を、三人の友人の一人ハーンズに任せ、伊意と共にエルメキア朝に侵攻を開始した。
 エルメキア朝も、この攻勢に対抗しようとするが、力の差は歴然で有り、島々は次々とパルテブランにより奪われた。

  この時、エルメキア朝の王であったアラウは、宮廷魔術師ゾフェードェスと、各宗派から選出される司祭達の代表である神官長であったゼヴァの司祭ボルトンと対策を協議した。
 兵数などでは劣るエルメキア軍では、太刀打ちできないのは明らかである以上、非常の手段を使うしか対策は無かった。

  二人は魔界の住人達を呼び出し、それを持ってパルテブラン軍に対抗しようとした。
 通常の人間が、魔界の住人を物質界に呼び出すことは不可能である、しかし、こちら側に住み着いた魔界の住人であれば、それが可能ではないのかと考えた。
 特に、魔界を管轄に納めるゼヴァの司祭であったボルトンは、この考えに自信があった。  しかし、物質界に住む魔界の生物を探し当てることが出来ず、ボルトンは、各宗派の代表から責められ、その地位が危うくなった。
 この企みは失敗するかに思えたが意外な方向に事は進んでいく。

  ある時、魔術師ゾフェードェスに一人の男が近寄り、あることを教えた。
 それは、王自らが、魔界の生物の血族になる方法であった。
 ゾフェードェスはその方法に半信半疑であったが、ボルトンに相談し、ゼヴァの司祭であったボルトンが、良策であると認めたため、二人はこれを実行することを決め、王に上申し、王もまた、自らが魔界の生物になろうとも、王朝を守るためには、致し方なし考え諒解した。

  これが明らかになった時、フローディアの司祭であった、オーソンヌ修道院のビゥヴェ女司祭は強硬に反対したが、ボルトンは王に、女司祭は、パルテブラン軍に買収されていると讒言し、修道院の尼僧達を生贄として魔界の生物を召還するように進言し、王はこれを信じ実行した。ボルトンにとって、ビゥヴェ女司祭は、彼の地位を狙う危険人物であったので、この機に彼女を排除しようと考えたのであった。

  ところが、ゾフェードェスには、修道院の尼僧の一人であるアンヌ・レコセーズという、愛人がいた。彼としては彼女だけでも救いたかったが、王もボルトンもなぜ、助ける必要があるのかと彼を問い詰め、許さなかった。彼としては、尼僧と知りながら情を通じていたため、理由を説明して、王に助命を願うことが出来なかった。

  しかし、実際に目の前で愛する女を殺されてみると、王とボルトンに対し憎しみを覚えるようになった。
 王を魔界にするための実質的な儀式は、謎の男に、その方法を教えられた彼が行うのである。彼は、王に対し、その儀式中に復讐を果たすことを考えた。

  彼は誰も入ってはならないと術を行う場所を封印させ、その中で謎の男から授かった魔法陣を描き、宝玉のかけらを掲げ、魔界の第七世界の生物と交信した。  彼は、エルメキア王朝を魔界の生物に売り渡した。

  彼は見るからに、おぞましい女の魔神の召還に成功し、王に向かい、この魔神と交わることで子をなせば、王が魔族の血族になった証になり、血族たる王を守るため、魔界の住人達は、力を貸してくれるだろうと王に伝えた。
 王はそれを信じ、女魔神との間に子をなした。
 レベッカと名づけられたこの娘は、一ヶ月で三歳くらいにまで成長した。
 魔族の血を強く引く娘は、王を操り始め、ゾフェードェスと結託し、ゼヴァの司祭ボルトンを殺させた。

エルメキア王朝の滅亡
−ソロモンの頌歌とシュビラの託宣−

  エルメキア朝では一つの伝説があり、ジアルクラなる邪神が復活したあかつきには、世界は滅ぶというものがあった。
 それを阻止すべく各宗派は研究を進め、運命の三女神の司祭達が見出した、彼女らの経典であったシビュラの託宣こそ、その方法が記されたものであると思われた

  それと共に、解読不明ながら、文面のところどころにジアルクラと良く似た綴りが記されていたソロモンの頌歌という経典も、各宗派の代表により重要に保管されていた。

  王を操っていたのは王の娘レベッカだが、結局、その娘に知恵をつけるのはゾフェードェスであり、実質、王朝はゾフェードェスのものになっていた。ゾフェードェスは、次々と各島々が陥落していくのを知ると、もはやエルメキア朝の存続は不可能と考え、であれば、ソロモンの頌歌を自らのものとすることを考えた。

  そして、レベッカを通じ、王の命令として各宗派の代表から提供させたゾフェードェスは、謎の男に与えられていた解読書を下にソロモンの頌歌の一部を解読し、魔界の第七世界のことを知り、更なる解読をすべく不死なる者となる術に挑み、見事成功した彼は、頌歌を持ち闇に消えた。

エルメキア王朝の滅亡
−雷禪の奮戦とレベッカの暴走−

  パルテブラン軍は、そんな間にも次々と各島を攻略していたが、補給戦が伸びたこともあり、苦戦を強いられるようになっていた。
 これを演出したのは、操船技術に勝るエルメキア人の特性を生かし、パルテブラン軍の輸送船段を襲うという徹底的なゲリラ戦法を駆使したエルメキア朝の第三王子ライショウであった。

  これにより、パルテブラン軍は、その補給線を確保すべく、しばしの停滞を余儀なくされ、王朝は、滅亡の時期をわずかながら伸ばすことが出来た。

  しかし、その間に、とても人間とは思えぬ早さで成長を見せるレベッカは、幼女から少女になり、魔神の血の影響が強まっていった。彼女は人肉を欲し、アラウ王を操り、少年の肉を集めさせ、それを食し始めた。

  まさか、王が妹に操られているとは思わない王の息子達は、王を諌めたが、王は頑として聞かず、執拗に諌めた第三王子ライショウは追放されてしまった。
 さらに、王はライショウに追っ手をかけたが、ライショウは、雷禪(ライゼン)と名を変え、顔までも作り変え逃亡した。

  残された二人の王子のうち、皇太子ベルカンゾは王に協力することを選び、次子たるルーゲスト大公は恐怖し、隠棲してしまった。

エルメキア王朝の滅亡
−アラウ王の最後−

  ライショウのゲリラ戦に悩ませられなくなったパルテブラン軍は、補給線を整え終わると、総攻撃を仕掛けた。
 王朝の存続などに興味を示さないレベッカは、魔界の生物に協力など要請することも無く、王城が炎に包まれると、自ら魔界への道を開き、自らに忠誠を誓った兄ベルカンゾを連れ、第七世界に逃亡した。

  アラウ王は、レベッカの支配から逃れ、正気に戻ったときには、炎に包まれていた。
 自らが犯した罪の意識に苛まれながら、再生の時を信じ自らに最後の魔術をかけ、エルメキア王朝最後の王として自決した。

エルメキア王朝の滅亡
−レベッカ封印−

  エルメキア朝を滅ぼしたパルテブランは、アラウ王の為したことを知ると、その行為を忌み嫌い、有益と思えたエルメキア魔術の書と、シビュラの託宣のような重要な経典を残し、全ての書物や文明の遺産を焼き払った。
 ついで、隠棲していた第二王子たるルーゲスト大公を捕らえ、彼から聞かされた事の顛末の詳細から、レベッカという危険な存在を知り、レベッカが魔界より戻れぬよう、パラケルススにより彼女の立ち去った魔法陣を封印させ、その封印を守らせるためガーディアンを七体、パラケルススに作らせた。

  ただ、レベッカに興味を持ったパラケルススは、ガーディアンとして召還した幻獣であったバルバロイに、封印を守ると共に、レベッカの調査を命じた。

  パルテブランはルーゲスト大公を、情報を教えた功により命は取らず幽閉した。
 エルメキア人達は、奴隷としてのみ存続が許され、王朝は完全に滅亡した。

シンフォニアの成立
−パルテブランのプライム侵攻−

  エルメキア朝を滅ぼしたパルテブランに、伊意は別世界の存在を教えた。
 全世界の統一を考えていたパルテブランは、彼の進言に従い軍を西に向けた。

  エルメキア人を奴隷とし、類まれな航海術を持つに至ったパルテブラン軍は、その技法で海を渡り、下界への入り口がある島にたどり着いた。
 パルテブランは、アリアールの迷宮を伊意の案内で進み、ついにプライム・マテリアル界に降り立った。

  この時、彼がどの程度の軍勢を率いていたかは不明であったが、彼の持つ神秘的なまでのカリスマと、指揮能力は健在で、アリアール島からアイーダ大陸に上陸するや否や、クレオ朝の軍勢を撃破し、数年のときを経て、クレオ朝を滅亡させた。

  パルテブランは、そのまま東進しいくつかの小国家や、都市国家を滅ぼし、アルカナ大陸を超え、ついにプライム・マテリアル界の東の果てであるアドール大陸にまで進軍した。

  そこは人間は住み着かぬ地でありながら、気候温暖で、豊饒な地であった。
 アルカナ大陸と、アドール大陸を隔てていた山脈が、人間の進入を許さなかったわけであるが、プライム界の人間よりはるかに高度な文明を持つパルテブラン軍は、悠々とこの山脈を踏破し、さらに海岸と山岳部の狭隘な地に街道まで敷設した。

  プライム・マテリアル界征服に伴い、パルテブランはパトリアエ・マテリアル界のデミヒューマンらを奴隷としてプライム・マテリアル界に同行させ、その地に住まわせた。

シンフォニアの成立
−パルテブランとアドール大陸−

  アドール大陸には人間は存在しなかったが、各種デミヒューマンは存在した。パルテブランはこれを襲い服従させ、自らは、アドール大陸の中央部に都を作り、巨大な都市を建設した。
 パルテブランは、そこを中心に、中部から北部アドールを開拓し、都市を建設し、街道を敷設した。そして、大陸の東部にある半島にまで足を伸ばした時、パルテブランはそこに楽園を見出した。

  その地を個人の別宅を作った彼は、プライムでの国政の全権を都に残した伊意に任せ自らは、その別宅に住み着いた

シンフォニアの成立
−世界の楽園・アルカディア−

  パルテブランは、このアドール大陸の東の果ての半島を、世界の楽園・アルカディアと名づけ、半島南部の湖畔に広大な邸宅を作り住み着いた。
 ここまで彼に付き添ってきたパラケルススには褒美として半島の北部の地を与え、そこで魔術の研究を行なうことを許し、パラケルススは半島内の各地をめぐり実験材料を集め研究を行なった。

  パルテブランは、他の大陸からこの世界の人間を奴隷としてこの大陸にも連れて来させ、彼とともにこの地に来た兵士達の中には、奴隷の中で気に入った女を妻とし、その間に子を成す者も続出した。
 パルテブランは、十数年をこの地で過ごし、平和は永遠に続くものと思われた。

シンフォニアの成立
−パルテブランの帰還−

  長らく戦いから離れたパルテブランは、平和に飽き始めた。戦いの中で得られる高揚感と充足感を彼は再び求めた。
 そうなると、敵が居ないこの地はあまりに退屈で、彼はパトリアエ・マテリアル界への帰還を考え始めた。

  かの地では、おそらく彼の友人が、いくつかの文明と戦っているはずで、彼の望む敵が、必ず存在することは確実であった。
 パルテブランは重臣を集め、帰還を宣言した。

  彼はこの地で蓄えた財をパラケルススに作らせた迷宮内に保管し、いつでも帰ってこられるようにして、全軍を率いてアドールを離れた。
 パラケルススと伊意は、この地に残ることを望む者のためパルテブランにとりなし、それを認めさせると、さらに彼らのために技術書などの重要書類の写本を与えた。

  パルテブランは再びアリアールの大迷宮を通り、パトリアエ・マテリアル界に戻った。
  尚、これに際し奴隷として連れてこられたデミヒューマンらはそのまま取り残され、プライム・マテリアル界にて各種族が各集落を形成し生活し始めた。

シンフォニアの成立
−初代剣聖パルテブラン−

  パトリアエ・マテリアル界に戻ったパルテブランは、各文明を侵略していた友人と合流し、それらの全てを滅亡させ、支配下に収めた。
 ここに、彼は二つの物質界の覇者となった。

  二つの物質界を支配下に収めたパルテブランの功績は、神々の認める所となり、使者に姿を変えた一人の天使が彼の元を訪れ、彼に初代剣聖の銘を送り、神々から彼に二対の剣と甲冑、そして盾が与えられた。

  一対は、神剣ファルスタッフ、→聖鎧レオパルド、→皇盾ヴィスカルム。もう一対、神剣ナイトリンガー、→聖鎧サザンクロイツ、そして→皇盾フォルフォージョンの光と闇(この盾は二枚一組になっていた。)であった。

  さらに神々は、ベルムのアーティファクト(神々の作った工芸品)である聖杯、バギムのアーティファクトであるニーベルングの指輪、バイシャのアーティファクトである魔神の騎士を彼に送り、物質界の王として認めた。

  これらを授かったパルテブランは、プライム・マテリアル界と、パトリアエ・マテリアル界をつなぐアリアールの迷宮を通り、簡単に下界から侵入されないようにするため、パラケルススに命じ、神から授かった三つのアーティファクトを用い、迷宮内に三つの門を作らせた。

  命じられたパラケルススは迷宮に赴き、プライムの入り口に聖杯を配し、迷宮の中腹に魔神の騎士を門番として置き、パトリアエ・マテリアル界の門を開く鍵として、ニーベルングの指輪を用いた。

  一方、パトリアエ・マテリアル界からプライム・マテリアル界へは、資格を有するものであれば、安易に行けるようにされた。そして、その資格とは、剣聖に与えられた二対の剣と甲冑の内、どれかを所持していることが条件であった。

  その後、パルテブランは、自ら創り上げた国家をシンフォニアとし、最大の功労者として彼を下界に導いた伊意を賞し、神の使者に彼にも何らかの褒賞を与えるよう願った。
 神々はこれを認め、彼には仙人という称号を送り、人間に扱える最大の術として神々が考案したエノク文字である仙力法を与えた。

  これは、ハディートが弟子達に神々の文字であるエノク文字を教えていることに対するあてつけでもあった。

  尚、パルテブランによりアリアールの大迷宮が封印されて以後、パトリアエ・マテリアル界はシンフォニア界と呼ばれるようになる。
 シンフォニアとは、帝国名でもあり、世界の名でもあった。

パルテブランの死
−パラケルススのあせり−

  伊意が仙人となり、人間界最高の術を与えられたことは、それまで軍師として、また、宮廷魔術師として彼に尽くしてきたパラケルススにとっては、面白くないことだった。
 彼としては、宮廷魔術師としての誇りがあり、再びパルテブランに自らを認めさせるための研究を始めた

  彼には六人の高弟がいた。
 その内なる魔力に惹かれたシュールを預けたトラッディーもその一人である。
 彼らにはそれぞれ得意とする分野があり、その分野を象徴する別名がつけられていた。

  パラケルスス第一の弟子で、暗黒魔法に長じており、黒霧の魔導師と呼ばれたコルネリウス・アグリッパ。
 炎の精霊力に通じ、その系統の魔術の使い手であった赤炎のザルバーン。
 大地の精霊力と、死霊魔術に精通していた、緑林のホノリウス。
 氷の系統を得意としていた氷雪のアルベルツス。
 魔法生物の製造に卓越した力を見せ、風の力を操るパラケルスス最後の弟子である、白い手のイウェイン。
 そして、その能力では兄弟子アグリッパにも匹敵すると言われた霧のトラッディーの六人である。

  パラケルススは彼ら六人の弟子と共に、二つの研究に没頭した。
 一つは古代王朝が侵攻していたベイバロンの秘術について。もう一つはエルメキア朝滅亡時に、魔界の第七世界に逃れたレベッカのことであった。
 これらが解明されれば、自分の地位は伊意に取って代われるであろうと考えたパルテブランだが、結局の所解明することは叶わなかった。
 それでも彼は、優れた魔法アイテムを作り出し、また各地で発見された工芸品や聖宝を所持していた。

パルテブランの死
−王太子問題−

  パルテブランには、二人の王子がいた。  愚鈍な兄と、パルテブランに愛されていた次子であり、二人は異母兄弟であった。  パラケルススは自らの地位をより強めるために、パルテブランに愛されていた次子に組していた。一方、三人の友人と伊意は、長子継承こそ国家の安定と考え、事あるごとにパルテブランには、お家騒動を招かぬためにも、長子を王太子として擁立すること提案した。  ここに、パラケルススと、伊意、三人の友人との間に徐々に亀裂が生じ始めた。

  パルテブランは結局、感情より理念を採った。国家の安泰を考えると三人の友人と、宰相たる伊意の支持がある長子を王太子としたほうが良いと考えた。

パルテブランの死
−パラケルススの死と呪い−

  パラケルススは、自分が組していた次子が王太子として擁立されなかったことで、敗北を認めた。しかし、自らの子供が王太子になれると信じていた次子の母親は、事あるごとにパルテブランに詰め寄った。

  彼の三人の友人の一人ハーンズは、将来の禍根を除くべく、この次子と母親の排除を考えたが、さすがにパルテブランに進言する勇気は無く、一派が頼りにしている重心パラケルススを排除することで、黙らせようと考えた。

  ハーンズは、自らが組織していた情報部にパラケルススの身辺を洗わせた。
 すると、彼が、古代王朝の生き残りであるシュールをかくまっている事実が判明した。  このことを知ったパルテブランは、パラケルススに刺客を送り込んだが、パラケルススは危機を知り、いくつかの宝を持ち出して逃亡した。

  しかし、パルテブランは追跡の手を緩めず、ついに彼の隠れ家を発見した。
 パラケルススは、逃れられないことを知ると、パルテブランに呪いをかけるべく彼の最後の術を始め、その完成を六人の弟子に託すため、従者に書簡を持たせ、従者を逃がし、隠れ家に火を放ち自死した。

  パラケルススの滅亡により、頼る者の無くなったパルテブランの次男はメザー教団に預けられ、その母は幽閉された。

パルテブランの死
−呪いの完成−

  パラケルススを処分したパルテブランは、彼の所持していたいくつもの宝を自らのものにした

  一方、書簡を受け取った六人の弟子のうち、ザルバーン、ホノリウス、アルベルツス、イウェインの四人は、すぐさまそれぞれの魔術で呪いをかけるための儀式を開始したが、トラッディーは無益なことであると術への参加を拒んだ。
 アグリッパは術の完成と引き換えに、自らの命が失われる可能性があることを知っており、参加する気は無かったが、本来なら自らが受け継ぐべき宝が奪われたことを知ると、呪いの代償を受けにくいよう、少し遅れて参加することを決め、術に入った。

  呪いは完成した。しかし、パルテブランの力は予想以上に強力で、呪いを掛けた彼らはその代償として命をを失った。
 赤炎のザルバーンは自らの力の源である炎に焼かれて死に、緑林のホノリウスはミイラとなって朽ち果てた。氷雪のアルベルツスは氷柱の中で氷付けとなり、白い手のイウェインは、その白い左手のみを残して砕け散った。

  彼らの命と引き換えに、パルテブランは力を奪われ、アグリッパにより呪いは完成された。
 パルテブランにかけられた呪いは、徐々に彼の健康を奪い、ついに彼は謎の病に倒れたが、それが呪いであることを見破ることが出来たものは居なかった。

  空前絶後の英雄、パルテブランは崩御し、その後は王太子であった長子が継ぎ、イキサレス一世となりシンフォニアの頂点に立った。

その後のシンフォニア

  イキサレス一世が登極後、シンフォニア帝国は、パルテブランの三人の友人が治める、シンフォニア三聖国たる、アステガ、ラッバース朝、元、に分割統治され、三人の王の上に剣聖が君臨するという図式になっていたが、実際には、イキサレス一世はハーンズの傀儡として、剣聖位にあったに過ぎなかった

  成長するにつれ、傀儡であることに嫌気をさしたイキサレス一世は、密かにハーンズを除こうとしたが、未然にこのことをハーンズの部下に知られ、その者達の手によって、暗殺された。
 ハーンズは、三聖国の王と謀り、メザー教団に預けられていたパルテブランの次男をコールマン一世として登極させ、同時に後顧の憂いを断つべく、幽閉されていたその母親を密かに処刑した。

  コールマン一世は、幼少時に見せた才気を隠し、ハーンズ存命中はハーンズの傀儡に甘んじていたが、ハーンズが病死すると、重臣達の取り込みに成功した。  ハーンズの後を継いだ元王ロタールが剣聖位を狙ってコールマン殺害を謀るも、その企みは、コールマン一世派で固められていた重臣達の知る所となり、ロタールは捕らえられ処断された。

  以降、剣聖が、元王を兼ねるようになったが、それは剣聖の権力が元一国に留まることを意味し、シンフォニア三聖国はそれぞれ独立国家となり、この後、時に争い、時に和平していくことになる。

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